24年10月 3日
現在の3D測定結果に満足していますか? 正確かつ再現性に優れ、信頼できると確信できますか? 記事を見るここ数十年、リバース・エンジニアリングは、世界中の製造業者に活用され、製品設計や生産プロセスには不可欠な要素となっています。航空宇宙から自動車、日々の消費財に至るまで、工業エンジニアや製品設計者は、文書や図面がないレガシーパーツの複製、競合製品の分析や分解、既存製品の修正や改良などにリバース・エンジニアリングを活用しています。対象となるパーツやアセンブリを信頼性が高く、正確で確実なコンピュータ支援設計(CAD)モデルにデジタル化するためのハードウェアやソフトウェアも、技術の進歩に伴い進歩しています。新しい計測センサー、より高速で安価なコンピューティングによって実現されたより高性能なソフトウェア、そしてAIの進歩によって、今後のリバース・エンジニアリングが形作られます。これによって、リバース・エンジニアリングの用途がさらに広がる可能性があり、さらに様々な幅広い専門家によって利用されるでしょう。
以上のすべてを考慮して、今後数年間、リバース・エンジニアリングの動向に影響を与えると思われるトレンドをみてみましょう。
2023年に向けたリバース・エンジニアリングで、トップ3に挙げられるトレンドはなにか?
リバース・エンジニアリングのトレンド(その1):3Dスキャナーによるラピッド・プロとタイピング
今日、製造される製品のほとんどは、組立ラインから出荷されるまでに、何度も繰り返し作業を経た製品です。この繰り返し作業のワークフローは、ラピッド・プロトタイピングまたはファスト・プロトタイピングと呼ばれ、製品や部品の物理的なプロトタイプやモデルをできるだけ早く開発し、最終製品の設計をエミュレートするために使用するプロセスを指しています。近年、ラピッド・プロトタイピングは、製造業者が大量生産に踏み切る前にデザインのアイデアをテストし、検証するために適した手法であり、コストのかかるミスや遅延のリスクが低減されます。
リバース・エンジニアリングは、このワークフローにおいて重要な役割を担っており、企業は既存の製品やパーツのデジタルモデルを作成し、ラピッド・プロトタイピングのベースとして使用することができます。例えば、自動車メーカーは、CADファイルの作成から始めるのではなく、3Dスキャナーを使用してアセンブリに合う製造用パーツをキャプチャし、それをリバース・エンジニアリングによって新しいパーツのベースラインとします。これによって、製品開発プロセスが加速されるのみでなく、最終製品の品質も向上します。新モデルの歯ブラシのような単純なものでも、MRI装置のようなものであっても、常に新しい製品デザインを生み出しているデザインスタジオでもプロセスが加速されたり、製品の品質も向上したりします。何もないところからではなく、スキャンから始めることで、時間を大幅に節約することができます。
3Dスキャナーやリバース・エンジニアリング・ソフトウェアがよりスマートで安価になり、技術者でなくても利用できるようになったため、ラピッド・プロトタイピングは様々な領域でさらに普及すると思われます。設計の専門家は、CNC機械加工や射出成形などの従来の時間がかかる製造工程に頼るのではなく、光やレーザーをベースにしたスキャン技術、CADソフトウェア、積層造形法を利用して、正確で機能が豊富なプロトタイプを即座に開発することを選ぶようになります。携帯型のポータブル3Dスキャナーを使えば、あらゆる製品やパーツを現場でスキャンし、最終的な3DモデルをCADソフトウェアにアップロードして、仮想テストや分析を行ったり、3Dプリント・ソフトウェアにアップロードして迅速かつ忠実なプロトタイプを作成したりできます。
リバース・エンジニアリングのトレンド(その2):積層造形法(3D プリンティング)
リバース・エンジニアリングの第二のトレンドは、積層造形法の利用拡大です。「アディティブ・マニュファクチャリング」あるいは「3Dプリント」と呼ばれることもある積層造形法は、CADファイルを使い、材料を何層にも重ねて接合して、3次元パーツを作る高度な製造プロセスです。1980年代以降、積層造形技術は急速に発展してきました。近年のハードウェア、材料、ソフトウェアの進歩によって、積層造形法はより多くの企業が利用できるようになり、一部のハイテク産業に限られていたこのツールを、より多くの企業が利用できるようになりました。
これらはすべて、必然的にリバース・エンジニアリングの応用範囲に影響を与えることとなりました。プロ仕様の3Dプリンターが、コスト的に格段に購入しやすくなり、パーツ当たりの単価が下がり、新しいプリント材料が登場したため、さらに多くの企業が積層造形を使い、より広範な製品をコスト効率よくリバース・エンジニアリングすることができるようになりました。
既に多くの企業が、リバース・エンジニアリングのルーチンの一部として積層造形法を導入しています。例えば、靴の製造業者は、ポータブル3D測定技術を使用して、古いモデルをキャプチャし、修正し、3Dプリントして、新しいモデルがどのように見え、どのように動くかを確認してから生産段階に移行しています。自動車の修理工場では、プロトタイピングのために積層造形法を導入し、入手できないパーツがあればそのパーツを製作して、車が動くようにしています。動物病院を含む病院の中には、3Dプリンターを導入して、リバース・エンジニアリングされた患者のスキャンデータに基づいてカスタム化した装具や補綴を開発している病院もあります。
3Dプリントと3Dスキャンの技術が向上するにつれて、リバース・エンジニアリングやプリント・ソフトウェアも改善され、より多くの製造業者がこれらの技術を活用して、リバース・エンジニアリング作業が効率化されるようになるでしょう。
リバース・エンジニアリングのトレンド(その3):仮想化
リバース・エンジニアリングと並んで、製造業者がワークフローに広く組み込んでいるもう一つの新しいアプローチが仮想化です。これら2つの用語はデジタルツインとも呼ばれ、対象物のデジタルモデルを作成するプロセスを説明する同義語として使われる場合もあります。しかし、仮想化はさらに進んでおり、物理的なプロトタイプのない仮想空間で製品の設計を分析・最適化し、異なる動作条件下で製品がどのように動作するかをシミュレートすることを意味します。
仮想化は、エンジニアリング、デザイン、製造の各プロセスで役に立ち、この技術のおかげでユーザーは、生産に移る前に実物そっくりな仮想プロトタイプを操作できます。また、VRやARを使えば、製品を作る前にその製品のエルゴノミクスをテストしたり、仮想環境で変更を加えたりし易くなります。さらに、仮想空間では、工場の仮想ツアーや機械の操作方法の仮想的デモンストレーションなど、作業者に没入感のある学習体験が提供されます。さらに、別々のチームが別々の場所から仮想モデルを共有し、アクセスできます。これによって、製品開発における共同作業やコミュニケーションが、さらに容易となります。
最近のARやVR、人工知能、機械学習の進歩によって、さらに広範な製造業者や業界で仮想化が利用できるようになりました。仮想化は、航空宇宙、自動車、製造業などのハイテク分野で多く利用されていますが、建設、建築、エンターテインメントの分野でもさらに一般的になりつつあります。例えば、異なる気象条件下で建物がどのように反応するかをシミュレーションしたり、映画やテレビ番組のデジタルセットを作ったりするために、仮想化が利用されています。
また、COVID-19やリモートワークの普及によって、モデリング、現場のシミュレーション工程の制御、生産計画、テスト、検証などにも仮想化が活用しやすくなっています。
では、仮想化はリバース・エンジニアリングに、どのような影響を与えるのでしょうか。仮想化が進むと、一から作成された従来の3Dモデルよりもリアルな製品や空間の仮想モデルを作成する必要があります。そのためには、高精度なスキャン技術とリバース・エンジニアリング・ソフトウェアを駆使して、クリーンで高品質なソリッド3D CADモデルを作成し、仮想セットアップで利用する必要があります。
仮想化の普及に伴い、3D計測技術もさらに一般化していくでしょう。そのため、技術スタッフのみならず、他の従業員にも、この技術の使い方を学ぶ必要性が出てきます。スキャナーもソフトウェアも、低価格で操作性に優れたものが増えてきているため、より多くの人が自分たちの作業環境でこれらを使えるようになります。