3Dスキャナーによる初回製品検査を改善、最適化、効率化する方法

初回品検査(FAI)は、製造工程の重要なステップです。品質管理(QC)チームは、設計・製造間で何度もやり取りを行わずに済むよう、FAIを最適化する必要があります。QCチームに求められるのは、欠陥を正しく特定するだけでなく、特定した問題の解決に必要な関連データ、測定値や結果を提示することです。

多くの場合、問題を探して見つけ出すのは品質管理者の仕事と見なされ、管理者は、情報を提供することなく問題の特定だけを行うのが当たり前になっています。しかし、効果的なツールを導入することで、問題を特定できるだけでなく、実行可能な解決策を見つけ出すことができるとしたら、生産をより迅速に進められ、遅滞なく、状況を複雑化させることもなく初回品を出荷できるようになります。

本ブログでは、新たな技術の進化、そして、品質管理責任者の作業を容易にするその技術の力に迫ります。また、顧客の要件を細部に至るまで満たす、仕様に準拠した高品質の部品を出荷できる安定した製造工程の構築にFAIがいかに効果的かについても解説します。

検査報告書を確認しながら、生産の組み立て工程について話し合う2人の品質管理責任者

初回品検査(FAI)とは

その名のとおり、FAIとは、量産開始前に部品がすべての要件を満たしているかを検査することです。主として新製品や新規設計品に対して行われ、設計意図が製造工程で正しく解釈されているかを確認します。また、契約書や仕様の要件に準拠していることを示すのに必要な文書も顧客に提出します。

FAIがなぜそれほど重要か

FAIの目的は、製造の問題を明らかにし、問題解決が手痛い出費となる前にミスを発見することです。FAIの実施によって、結果的に返品率を低く抑えられ、再作業に関連するコストも低減でき、顧客満足度と収益性の向上にもつながります。

FAIはなぜ難しいのか

とはいえ、新たに開発した部品のFAIを実行するのは難題です。すべての特徴を測定して検証しなければならないため、時間がかかります。座標測定機(CMM)でFAIを行う場合は、特に多大な時間を要します。それほど重要でない特徴の検査によって引き起こされるボトルネックが原因でCMMが使用できなくなると、部品の品質ばかりか生産のリードタイムにも悪影響が及びます。

問題は、(新たなプログラムではよくあることですが)新規部品の点数が多ければ多いほど、実施するFAIも多くなり、(さらに、それを実施する人材もより多く必要になり)CMMの利用時間を、しばしば短期間でより多く確保する必要が出てくることです。

CMMのボトルネックをどうすれば回避できるのか

CMMは、その精度の高さから、FAIに広く用いられています。事実、CMMは、測定の専門家にとって、基準となる測定装置であり続けています。ただし、多くの専門家に求められているとはいえ、いくつか欠点もあります。

CMMは、新たに大量生産する部品のFAIにのみ利用するものではなく、あらゆるタイプの検査、特に重要な寸法の測定を行えるよう空けておく必要があります。性能基準や公差が厳しい場合、測定の専門家は、重要な特徴の検査をCMMで行うことを選択します。しかし、専門の作業者がプログラミングして操作する必要があるうえ、動作も遅いCMMでは、行う必要のある品質検査が滞って、著しいボトルネックが引き起こされ、これにより、製造工程の進行に遅れが出ます。

このため、重要な寸法のFAIを確実に行うには、CMMを利用できるかどうかがカギとなります。それには、それほど重要でない検査を(習得が容易で使いやすい)他の測定機器に割り振って、QCチームが、公差の厳しい特徴の最初の検査で足止めを食うという、コストのかかるCMMのボトルネックを回避できるようにする必要があります。

CMMによる自動車部品の3D測定

グローバル化という状況下で、FAIをどのように行えばよいか

さらに、FAIは、グローバル化という状況下で行われるようになっています。製品は、異なる国や地域を拠点とし、その製造工程も様々な数多くの下請け業者やサプライヤーが製造する何百もの部品で構成されています。組み立てたときにはすべての部品がぴたりと合い、位置も正しく、性能や効率性を損なうような欠陥のない、採算の取れる製品でなければなりません。

例として、ヨーロッパの自動車メーカーが設計した部品で見てみましょう。まず、数値モデルがアジアの下請け業者に送られ、そこで、型に入れて部品が作られ、その部品が南アメリカにある工場に送られて、車へと組み立てられます。初回品検査は、最初の組み立てを試みる自動車メーカーが行い、欠陥を明らかにします。部品のずれは下請け業者に伝えられ、下請け業者が金型を修正して新たなサンプルを工場に送ります。再び、部品がぴたりと合わなかったとします。下請け業者は、再度金型を調整するよう依頼されます。このように、長い往復のやり取りが繰り広げられるのです。

しかし、部品そのものを地球の反対側へ送ってCMMで測定するのではなく、部品をスキャンする方法があって、デジタルモデルを送信できるのであれば、効率性と時間短縮を共に実現できるでしょう。さらに、部品そのものに世界を巡る旅をさせることなく、仮想組み立てを行って、修正も仮想で判断できます。

CMMに代わる最良の機器とは

FAIの改善と最適化、効率化を実現するには、メーカーには、CMMをサポートし、QCの専門家が必要な精度とスピード、携帯性と汎用性、操作性を得られる代替ソリューションが必要です。

  • 精度:CMMに割り当てられていた検査を行うには、高い測定品質が絶対に必要です。代替ソリューションは、測定のセットアップ品質に関係なく、高精度、高解像度、再現性のある結果が得られるものである必要があります。現場で行う測定は、環境の不安定さに左右されることなく実施できる必要もあります。つまり、検査の際に部品が動いたり、振動や揺れがあったりしても、測定データが正確で、完全固定のセットアップも不要ということです。
  • スピード:CMMは動作が遅く、プログラミングにも時間がかかるため、代替ソリューションは高速で測定できる必要があります。また、手早く行えるセットアップ、リアルタイム・スキャン、すぐに使えるファイルなどの機能も備え、QCの専門家がFAIを効率化でき、データの収集・分析に要する貴重な時間も短縮でき、生産のダウンタイムも低減できるようにするものである必要もあります。
  • 優れた携帯性:金型の確認は生産ラインで直接行うことも少なくないため、QCの専門家は、性能や精度に影響を及ぼすことなく、様々な環境条件で動作可能な機器を装備しておく必要があります。制御された環境に設置する必要のあるCMMとは異なり、作業を代替する測定機器は、部品のある場所へと持ち運べる柔軟性を備えている必要もあります。
  • 汎用性:製品の品質を確保し、高い精度で診断を行えるよう、代替ソリューションは、複雑な形状で表面仕上げも様々な、大きさや形も異なる多種多様な対象物(新たに設計される部品ではこれがほぼ当たり前となっています)を測定できる能力を有している必要があります。
  • 簡単な操作:特別なトレーニングやスキル、経験のない人でも操作できるよう、代替ソリューションは、直観的に習得でき、使いやすく、プログラミングに多大な時間を必要としないものである必要があります。
現場で、光沢のあるシャフトをMetraSCAN 3Dスキャナーでスキャンするエンジニア

MetraSCAN 3Dスキャナーで初回品検査を行うvoestalpine社のエンジニア

  • 3Dスキャン技術はFAIに何をもたらすか

    すべての要件を満たす3Dスキャン技術は、CMMの代替ソリューションの最有力候補と目されています。その理由は、次のとおりです。

    現場で正確な測定が行える

    3Dスキャナーなら、QCチームは現場へ行って、いつでもFAIを行えます。つまり、欠陥部品を現場からCMMのある場所へ移動させることに関わる時間の無駄を省き、コストも削減できるということです。3Dスキャナーは、温度変化や振動、揺れの影響を受けることの多い現場環境で部品の測定が行え、精度に影響を及ぼすことなく、現場で自由に動かすことができるため、Creaform MetraSCAN 3Dといったメトロロジー・グレード(工業用寸法検査レベル)の3Dスキャナーは、大型で重量のある部品やCMMでなければならないほどの測定精度が求められない場合のFAIに最適です。

    短期間で習得可能

    ユーザー・フレンドリーなインターフェースを備え、人間工学に基づいて設計された3Dスキャン装置は、短期間で習得でき、使いやすいのが特徴です。HandySCAN 3Dといった、設定も収集も迅速に行えるメトロロジー・グレードのスキャナーなら、測定の専門家でなくとも詳細な分析機能を使いこなせます。この利用しやすさと使いやすさにより、初回部品の欠陥の検出と修正が遅滞なく行えます。

    詳細な分析を可能にする十分な情報量

    3Dスキャナーを活用すれば、QCチームは、非接触で測定された膨大なデータによって複雑な形状をデジタル化し、FAIの結果をより詳しく分析できるようになります。カラーマッピングによって、製造工程のどの段階で欠陥が現れたか、また、どの機械設定で欠陥が出たのかをすぐに特定できます。精密な測定情報が十分に提供されるからこそ、初回品に関わる問題解決と意思決定の時間を短縮できるのです。

    最終的に、3Dスキャナーは、グローバル化という状況下で行われるFAIを大きく前進させます。3Dスキャン技術なら完全仮想のFAIを実施することもでき、初めて実際に製作した部品がその1回で仕様に準拠することをも可能にします。現在3Dスキャン技術はその力を持っています。実現するかは、メーカーのトレーニングや文化、考え方にこの新たなノーハウを組み込めるかどうかにかかっています。

     

    CreaformのVXinspectソフトウェア・モジュールで作成した車両のダッシュボード・カラーマップ

    VXinspectに表示されたダッシュボード・カラーマップの結果

    初回品検査の改善、最適化、効率化を可能にする3Dスキャン

    測定装置キットにメトロロジー・グレード(寸法検査レベル)の3Dスキャナーを加えれば、慎重さが求められる、公差の厳しい特徴の検査をCMMに厳密に割り当て、それ以外の検査を3Dスキャンに割り振ることができるようになります。これによって、グローバルなサプライチェーンで一貫した生産品質を確保できるだけでなく、リソースが限られ、厳しい要件が課されるなかで、報告された品質に関わる問題をより正確に診断できるようになり、しかも、FAIの効率化も実現できます。

    さらに、CMMのボトルネックを低減し、量産前の調整に必要な時間も短縮できる3Dスキャン・ソリューションなら、FAIを最適化できます。最適化されたFAIであれば、品質管理で迅速に問題を特定できるだけでなく、解決策の提案も速やかに行えます。これにより、1回の試作でぴたりと組み立てられ、顧客の要件も満たす高品質の初回品が得られます。つまり、満足度も売り上げも利益率も飛躍的に向上するということです。

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