24年10月 3日
現在の3D測定結果に満足していますか? 正確かつ再現性に優れ、信頼できると確信できますか? 記事を見る図面は、寸法や公差を示す情報によって、誰もが理解できる言語で伝えるものです。図面は、極めて明確に示された基準、記号の他、部品の幾何学的特徴や公差を伝えるルールで構成されています。
エンジニアリングでは、製品の設計・開発に図面を使用します。図面は、生産計画で、ふさわしい材料や工程を決める際にも役立ちます。部品の製造と検査も、図面に記された情報を厳密に解釈して行う必要があります。図面の説明がない場合に起こり得る技術的問題や不履行の重大さを想像してみれば、事の深刻さがわかるはずです。
GD&Tとは「公差設計と幾何公差」のこと
このブログ投稿では、公差設計と幾何公差(GD&T)の基本的考え方と定義について解説します。具体的には、GD&Tとは何か、どのように役立つのか、GD&Tプロセスの実行がなぜ重要かなどです。また、図面に記載された幾何学的特徴や公差はすべて、明確な機能的目的があってそこに記載されているという点も浮き彫りにしたいと思います。図面は時に、生産コストをさらに削減できるということを教えてくれます。多くの場合、製造や検査に使用する必要のある固定アセンブリについても、図面から読み解くことができます。したがって、GD&Tは、製造工程全般にわたって最も重視すべき制約を課すものであることから、慎重に理解する必要があります。
GD&Tとは
GD&Tは、工学的な寸法と公差を定義して伝えるシステムです。GD&Tは、図面だけでなく、部品やアセンブリの公称(理論的に完全な)形状を明示的に説明する、コンピュータで作成した3D立体モデルでも記号言語で示されます。部品の制御された各フィーチャーにどの程度の正確度と精度が必要かを規定します。また、個々のフィーチャーの可能なサイズやこれらのフィーチャー間の向きや位置における許容変動も規定します。
GD&Tは、文書化された設計法として、また、製造のメカニズムとしての役割を担い、設計者やエンジニア、技術者が互いに明確にやり取りできるようにします。明確なやり取りによって部品に命を吹き込み、コンピュータ支援設計(CAD)と見事に一致する部品を作り上げることができるのです。
GD&Tはどのように役立つのか
GD&Tによって、図面に関わる(設計から加工に至る)すべての人たちが共通の言語で話せるようになります。その語彙には、平面度、真直度、円筒度、真円度、直角度、平行度、傾斜度、位置度、輪郭度、同心度、対称度などがあります。これらの幾何学的特徴は、部品を構成する他の要素にも関連する可能性のある基準として、それぞれ異なる公差カテゴリー(形、方向、位置や振れ)に分類されます。
研究開発(R&D)において部品を設計する人たち、また、機械工場で図面を読んで解釈する人たちの間で誤解があれば、多大な費用が無駄になります。そこで、部品の幾何学的特徴や公差の理解に役立つのが、GD&Tという統一された論理的な言語です。統一性と利便性がもたらされることで、当て推量や理解に要する時間が減り、設計および製造全体で一貫した形状を確保できます。
現代の設計はますます複雑かつ高度になっているため、設計者やエンジニア、技術者は、極めて正確かつ信頼性の高いコミュニケーションに頼る必要があります。GD&Tによって、チーム全員が互いに明確かつ効果的にやり取りできるようになるため、時間の節約につながり、設計、製造の各工程もより効率的に行えるようになります。
なぜGD&Tプロセスを行うのか
図面の徹底した解釈のカギを握るのが、エンジニアや機械工が同じ語彙を使って互いに理解し合えるようにする共通言語であるGD&Tです。材料には加工しやすいものとそうでないものがあるため、特定の材料の選択について、その影響を細かく調査でき、製造コストの削減につなげられます。図面を分析し、特に部品に機能的影響を及ぼさないと判断すれば、材料を1つに絞れます。
GD&Tプロセスの実行が正当であることを示すもう1つの重要なポイントは、各幾何学フィーチャーには公差が設定されているということです。公差とは、寸法のばらつきが許される最大値と最小値の差のことです。公差は、ぴたりと組み合わせてアセンブリにする部品を制御するために図面に記載されています。公差を用いることで、部品の入れ替えや個々のコンポーネントの交換が可能になります。
2つのフィーチャー間の最大変動は制御されている寸法に設けられている公差の合計と同じであるため、様々なフィーチャーの公差が累積します。したがって、制御する寸法が増えれば増えるほど、公差の累積も増します。最悪のシナリオでは、加工部品は、こうした累積した公差内に容易に収まっても、組み立て段階では、他の部品と合わなくなるということが起こりえます。
しかし、位置と方向を制御するGD&T法であれば、このような誤差の累積といったことで組立の問題が引き起こされる可能性は低くなります。それどころか、全公差をひとまとまりと見なすため、交換可能な部品から成るモデルの製造に再現性があります。徹底したGD&Tプロセスは、すべての設計要件を明示的に示すことで、すべての寸法仕様および公差仕様の正確な履行を確保します。
GD&Tがなぜそれほど重要か
設計が複雑になって公差が厳しくなればなるほど、より高度な工具が必要になり、製造工程や検査工程のコストが上がり、部品廃棄率も増加します。このため、部品の設計の際にGD&Tを考慮することが重要です。
位置や穴径に極めて厳しい寸法公差を設ければ、加工費は高くなり、加工自体も複雑になりますから、設計者やエンジニアは輪郭や位置を制御して公差を広めます。そうすることで、製造工程の複雑さを軽減して、コスト削減を可能にするのです。
この点から、GD&Tは適切な公差を許容しながら設計の精度を向上させることで、生産の最大化を実現します。このメリットは、GD&Tプロセスによって余剰な公差が獲得されることで、多くのプロジェクトで費用対効果のより一層の向上につながる点です。
GD&Tと3D測定
GD&Tと検査プロセスは絡み合っており、品質管理と品質保証に欠かせない段階の1つがデータ収集です。データ収集は、手動測定やタッチプローブ、3Dスキャンで行えます。これらの方法で実際の部品のデータを取り、それをデジタル化します。次に、測定値が、GD&Tコールアウトと呼ばれる、期待される幾何学エンティティに対応するかどうかの判断を行います。測定データをCADモデルに示された寸法と比較して合否を確認するのです。より重要なのは、公差限界値からの逸脱を定量化できることです。
端的に言えば、GD&Tコールアウトの評価には3D測定が必要です。位置のサンプルをプロービングするか、面をスキャンしてデータを収集すれば、部品品質、ひいては製造工程を、平面度、真直度、円筒度、真円度、直角度といった特定の幾何学的特性に従って評価することができます。
定義
平面度
平行四辺形記号で表される平面度は、1平面にすべての要素がある面、または、得られた正中面の状態です。平面度公差は、面または得られた正中面が収まらなければならない、平行する2平面によって定義される公差域を規定します。
真直度
真直度は、面素または得られた中線が直線である状態です。真直度公差は、面の対象要素または得られた中線が収まらなければならない公差域を規定します。真直度公差は、制御する必要のある要素が直線で表される図に適用されます。
円筒度
両端が平行線で閉じられた円で表される円筒度は、面のすべての点が共通軸から等距離にある回転面の状態です。円筒度公差は、面が収まらなければならない、2つの同心円筒で囲まれた公差域を規定します。
真円度
丸記号で表される真円度は、(a)球体ではなく、フィーチャーの場合は、軸またはスパイン(曲線)に対して直角な平面によって横断される面のすべての点がその軸またはスパインから等距離にある状態、(b)球体の場合は、共通重心を通る平面によって横断される面のすべての点がその重心から等距離にある面の状態です。真円公差は、面の円形要素が収まらなければならない、2つの同心円で囲まれた公差域を規定し、あらゆる平面で別々に適用されます。
直角度
水平線とそれに対して直角なもう1本の線で表される直角度は、データム平面またはデータム軸に対して直角な面、フィーチャーの中心面またはフィーチャーの軸の状態です。
平行度
2本の斜め平行線で表される平行度は、すべての点でデータム平面から等距離にある面またはフィーチャーの中心面、あるいは、長さに沿って、1つまたは複数のデータム平面またはデータム軸から等距離にある面またはフィーチャーの中心面の状態です。
傾斜度
角度を成して接する2本の線で表される傾斜度は、データム平面またはデータム軸から規定の角度で傾斜している面、フィーチャーの中心面またはフィーチャーの軸の状態です。
位置度
十字線記号で表される位置度は、別のデータムまたは1つまたは複数のデータムに関連する、大きさが規定された1つまたは複数のフィーチャーの位置です。位置公差は、以下のいずれかを規定します。(a)重心、軸または大きさの規定されたフィーチャーの中心面に真位置(理論的に正しい位置)からの逸脱が許される公差域。(b)(MMCまたはLMCに基づいて規定されている場合)、大きさが規定された対象フィーチャーの1つまたは複数の面に侵されない、仮想状態として規定された、真位置(理論的に正しい位置)にある境界。
面の輪郭度
曲線側が上、平らな面が下にある半円で表され、面公差の輪郭度によって決まる公差域は3D(体積)で、1つまたは複数の対象フィーチャーの長さと幅(または外周)に沿って拡大します。面の輪郭度は、一定の断面積を持つ部品や回転面を持つ部品、全体に輪郭度公差が設定されている部品など、あらゆる形状の部品に適用できます。
線の輪郭度
線公差要件の輪郭度によって決まる各線素の公差域は2D(面積)で、公差域は、各線素を通る、フィーチャーの真の輪郭度の法線です。真の輪郭度を示すには、設計立体モデルを作成します。線の輪郭度は、航空機のテーパー翼といった変断面積を持つ部品、あるいは、フィーチャーの面全体が単一エンティティとして含まれる公差域が望ましくない、押し出し成型品などの一定の断面積を持つ部品に適用できます。
同心度
同心度は、回転面の、正反対の位置にあるすべての要素の重心(または、2つまたはそれ以上の放射状に配置されたフィーチャーの、対応する位置にある要素の重心)がデータム軸(または中点)に一致する状態のことです。同心度公差は、軸(または中点)がデータム・フィーチャーの軸(または中点)に一致する、円筒形(または球形)の公差域です。制御対象のフィーチャーの、対応する位置にあるすべての要素の重心は、フィーチャーの大きさに関係なく、円筒形(または球形)の公差域に収まる必要があります。
対称度
対称度は、2つまたはそれ以上のフィーチャー面の、正反対の位置にある要素またはそれに対応する位置にあるすべての要素の重心がデータム軸または中点に一致する状態のことです。対称度の制御も同心度の制御も、異なる部品構成に適用される場合を除き、考え方は同じであるため、前段の説明がこの対象フィーチャーにも適用されます。
円周振れ
円周振れは、面の円形要素を制御します。部品は、シミュレーションされたデータム軸周囲の面の全範囲に対して回転するため、公差は、真円度の各測定位置で別々に適用されます。
全振れ
全振れは、すべての面素を制御します。部品はデータム軸周囲を360度回転するため、公差は、真円度と輪郭度のすべての測定位置で同時に適用されます。
最大実体状態(MMC)
最大実体状態(MMC)は、大きさが規定されたフィーチャーに、規定限界寸法(最小穴径、最大シャフト径など)内で最大量の材料が含まれる状態です。
最小実体状態(MMC)
最小実体状態(LMC)は、大きさが規定されたフィーチャーに、規定限界寸法(最大穴径、最小シャフト径など)内で最小量の材料が含まれる状態です。
幾何学的特徴 |
記号 |
真直度 | |
平面度 | |
真円度 | |
円筒度 | |
対称度 | |
位置度 | |
同心度 | |
直角度 | |
傾斜度 | |
平行度 | |
線の輪郭度 | |
面の輪郭度 | |
円周振れ | |
全振れ |
参照文献: ASME Y14.5-2009, Dimensioning and Tolerancing, Engineering Drawing and Related Documentation Practices, The American Society of Mechanical Engineers (ASME)