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ガソリンで走るスノーモービルのシャーシに工業用ディーゼルエンジンを組み込むという作業は、極めて複雑な形状を最先端の技術によって測定して正確な構造基礎を把握し、なおかつ、正確な寸法許容差を用いて行わない限り不可能です。また、騒音の低減と温室効果ガス排出量削減を実現しつつ、速度と性能を維持または向上させるという目的を十二分に達成することもできません。
支持構造全体の交換、オイルパン交換やドライサンプオイルシステムを使用するなどすれば費用がかかり、複合的な選択を行えば、信頼性の問題につながる可能性があります。したがって、エンジニアは、オイルパンの設計を変更せずに工業用ディーゼルエンジンを組み込めるよう、エンジンルーム(エンジン周り)を設計する方法を見出す必要があります。そのためには、現行エンジン、エンジン取り付け部およびエンジンルームを測定するステップが必要不可欠です。ただし、この設計には極めてクリアランスの狭い可動部が多く含まれるため、非常に高精度の測定機器で測定する必要があります。
エンジンを組み込み、なおかつシャーシの構造的完全性を維持できるようスノーモービルの構造基礎を変更するためには、アルミ鋳造物のありとあらゆる角度に加え、表面すべても測定することが絶対条件です。エンジニアは、エンジンとエンジンルームとの間の正確な寸法許容差を把握しておかなければなりません。残念ながら、これらの寸法許容差は、従来のツールでは正確に把握することができません。
キャリパー、従来の測定ツールのいずれの場合も、特定の表面領域を測定しようと思っても、あるいは、特定の表面領域について、目下の課題の解決に足る正確なデータを得ようと思っても、読み取りできない表面領域が出てきます。エンジンルームはかなり複雑な形状の組み合わせであることから、正確な寸法許容差を明らかにし、エンジンを迅速かつ効率的に組み込むための適切なクリアランスを得るためには、より汎用性も精度も高いソリューションが必要です。
エンジンルームの複雑な形状を従来のツールで測定するという方法で進めた場合、複合的に組み合わさったエラーによって設計と製造を何度もやり直し、ようやく正確な取り付け部品すべてが仕上がるということにもなりかねません。設計の過程につきものの反復作業を軽減するためには、適切な測定ソリューションの選択が最優先です。そうすることで、貴重な時間を無駄にすることなく、開発の他の段階も論理的順序で行えます。
オイルパンの交換やドライサンプオイルシステムの使用を回避する最良の方法は、エンジンルームの複雑な形状に合わせてエンジンをできるだけぴったり組み込むための支持構造を設計することです。3Dスキャン技術は、間違いなく、正確な寸法許容差を明らかにする、また、迅速かつ効率的にエンジンを組み込むための適切なクリアランスを得られるデータ収集にふさわしいソリューションです。
極めてクリアランスが狭い部分があることをCADモデルによって把握していたエンジニアが安心・信頼できるレベルであることから、3Dスキャンの精度の高さがわかります。エンジン取り付け部品は、製作後ぴたりと合うことが明らかになっています。
高解像度カメラによって形状を細部まで細かく捉えられることは、設計・開発チームにとって重要な特徴です。スキャンした部品表面と実際の部品表面とに矛盾がないかを見極めるためには、スキャン品質は非常に重要です。
最先端の光学技術と無制限のスキャンボリュームによる優れた汎用性も備えています。これらの特徴により、3Dスキャナーは、大きさ、形状、材質、表面仕上げや複雑さに関係なく、どのような対象物でもスキャンできます。
最適化も処理も終わった状態で生成されるメッシュをCADや3Dプリントソフトウェアにシームレスに素早く統合できるインスタントメッシュ機能を備えているからこそのスピードも優れた特徴です。
汎用性に優れた、高精度、高解像度、高速のスキャンソリューションを代表するのが、HandySCAN 3DやGo!SCAN 3Dといったメトロロジー・グレード(寸法検査レベル)の3Dスキャナーや、ソフトウェアプラットフォームのVXmodelやPolyWorksです。
クリーンなリエンジニアリングに加え、新たな設計のテスト段階で得られた様々な結果が、実現の究極の証明です。クリーンなスノーモービル競技会で勝利を収めるのに欠かせない以下の特長は、3Dスキャン技術によってもたらされています。
Clarkson SAE Clean Snowmobileチームには、様々な学部課程プログラムからエンジニアリング体験や設計の学生プロジェクトに参加する、約20名の学生がいます。彼らが行った最新のプロジェクトが、1年でディーゼル駆動スノーモービルを設計・製造するというもので、偉業と呼ぶにふさわしいものでした。
ポラリス・インダストリーズの多少の援助を受け、チームは、2020 Polaris Titan Adventureのシャーシを受け取って、改造を開始しました。再設計の一環として、新たなディーゼルエンジン、Caterpillar C1.1(1リットル3気筒、4ストロークディーゼル)の選定も行いました。シャーシは、エンジンルームのモデリングをSolidWorksによって作成できるよう、Creaformのメトロロジーサービスが(スポンサーとして)3Dスキャンを行うモントリオールに移送されました。
Clarkson SAE Clean Snowmobile社の社長であるショーン・シュナイダー(Shawn Schneider)氏は次のように述べています。「このプロジェクトは、Creaformによるエンジンルームの3Dスキャンと、Clarke Powered Solutions社から提供されたエンジンのSTEPファイルがなければ、このような方法で行うことは不可能でした。モデルの形状は信じられないほど正確で、スノーモービルを組み立ててみるとクリアランスの狭いインスタンスも完璧でした」
Clarkson SAE Clean Snowmobileチームは、今年度のSAE Clean Snowmobile Challengeのディーゼル搭載クラスで1位を獲得し、今年の初めにミシガン工科大学から戻りました。
シュナイダー氏は次のように付け加えています。「エンジンルームをスキャンせずに我々が行ったようにやろうと思ってもほとんど不可能だったでしょう」
チームは現在、新たなシャーシが必要になる2025年までに、来る4つの競技会に向け、CADでのより堅牢な設計の開発と改善に取り組める状況にあります。改造を可能にする信頼性の高い構造基礎を得ることが、必ずや今後の創造性と革新性の道を開くことになるでしょう。